【書籍紹介】『外国語で発想するための日本語レッスン』_中身のある英語を話すための必読書!

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『外国語で発想するための日本語レッスン』(三森ゆりか著)を、読みました。
英語学習をする日本人には、必読の書です!本書には、中身のある英語を話す、論理的で説得力のある英語を話す、意志のある英語を話すために必須の知識が詰まっています。外国人と英語で”対等に対話をする”ためには何が必要か、を知ることができます。

分析・解釈・批判の技術

本書では、”自分の考えを分かりやすく相手につたえるための技術”を学ぶことができます。
「テクストの分析と、解釈・批判(=クリティカルリーディング)」をする技術のことです。

“対象を客観的に論理的に分析し、
その分析をもとに対象を理解し、
その理解・解釈をもとに対象についての批判的意見を述べる”

これを会得することで、様々な事柄に対し、自分の考えを自分の言葉で伝えることができるようになります。
諸外国では当たり前のように学校教育でこういったことを教えられるらしいのですが、日本では殆ど教えられることはありません。

分析・解釈・批判ができる、とは?

テクストの分析と、解釈・批判ができると、どんな良いことがあるのでしょうか?
「絵」の分析・解釈・批判の例を見てみましょう。

本書では、「落穂拾い」の絵を用いて、分析・解釈・批判の方法が紹介されています。


ミレー:落穂拾い(wikipediaより)

多くの日本人は、絵の専門家か、絵がよほどの趣味でない限り、「落穂拾い」の絵が何を表し、どんな魅力があるのかを自分の言葉で語ることが出来ないでしょう。(本書を読む前までは、私もそうでした、、、)

ですが、「テクストの分析と、解釈・批判」のトレーニングを受けた方は違います。
以下は、東京都の実施する「言葉の力」再生プロジェクトの報告書、『東京から「言葉の力」を再生する』からの引用です。

http://www.chijihon.metro.tokyo.jp/katsuji/pdf/hokokusho1.pdf

 

以下は、クリティカル・リーディングを学習した中学校3年生2人が、ミレーの「落ち穂拾い」を見て、1,000字の文章で読み解いたものの一部である。
【1人目】この絵の表現の特徴は2つある。1つ目は、目に飛び込んでくるような色をあまり使わず、暗めの色をたくさん使っていることである。2つ目は、主として描かれているのは収穫をしている女性のはずなのにその女性の顔がまったくと言っていいほど描かれていないことである。このような特徴から、この絵は一所懸命に仕事をしていても社会的には光を浴びない女性たちのむなしさ、悲しみなどを見た人に訴えてくる絵だと言える。
【2人目】絵の手前に来るに従い画面が暗くなっているのは、人々の身の上を表現している。後ろに行くに従い色が明るくなり、仕事が楽なものになる。明るく光が当たっている部分に描かれたのは社会の中程度の水準にいる人々。そして手前の最も暗いところにいるのは社会においてピラミッドの底辺にいる人々、すなわち奴隷、もしくはそれに準じたクラスの人々である。
2人とも「落ち穂拾い」という絵の題名を知らず、この絵を初めて見たにもかかわらず、クリティカル・リーディングを学ぶことで、自分で考えて、絵を深く読み解いている。
(第2回「活字離れ」に関する有識者勉強会 三森ゆりか氏の講演内容を一部編集して掲載したもの。)

 

中学3年生が書いたとは思えない、洞察力にあふれた素晴らしい分析ですね。
「テクストの分析と、解釈・批判」の技術を身に付けることによって、このような中身のある考え方をすることができるようになります。

なぜ英語学習をする日本人にこの力が必要か?

それは、中身のある英語、内容のある英語、を話すためです。

英語をペラペラ話すことができても、会話の質・中身がなければ、何の意味もありません。
つまらないコミュニケーションをする日本人と、話しをしたがる外国人は、そうはいないと思いますよ。

反対に、英語が流暢に話せなくとも、中身のある・意味のある内容を伝えることができれば、そのコミュニケーションはとても有益で魅力的なものとなるでしょう。

本書において、多くの日本人は学校教育で「テクストの分析と、解釈・批判」をするトレーニングを受けていないため、論理的分析のもと批判的意見を述べることが苦手であると指摘されています。(私をまだまだ勉強中です、、、)
ディベートが苦手、意見を言って相手を納得させるのも苦手、論理的に物事を分析して意見することが苦手、質問にシンプルに答えられない、意見の理由を言うのが苦手、、、自分自身をそういう風に感じられる方も多いと思います。

しかし、諸外国人はそうでは有りません。学校教育で、十分に「テクストの分析と、解釈・批判」の力が鍛えられているのです。日本人が、日本語よりも不自由な英語を使って、このような訓練を受けてきた外国人とコミュニケーションをとる場合、この技術を会得していれば、不自由な英語を使ってでも、実のある・的を得たコミュニケーションをとることができます。そうでなければ、大人と子供の会話のように、ちぐはぐで的を得ないコミュニケーションで終わってしまうでしょう。

『外国語で発想するための日本語レッスン』(三森ゆりか著)を読んで、「テクストの分析と、解釈・批判」を力を身につけましょう!当校の図書館に置いておきますので、生徒さまはぜひ読んでみてくださいね!

 


2013年5月30日 木曜日 11:10 AM Category: 英語勉強情報のまとめ, おすすめの教材.